地震や台風などの災害は、あるとき急に襲ってきます。
そこで慌てないで避難するために欠かせないのものが「避難バッグ」。
でも、実際に災害が起きた現場で聞いたのは「思った以上に必要な物が入っていなかった」「あれがあったらもっと安全に避難できたのに」というお声でした。
実は、命を守るうえでとても重要なアイテムなのに忘れやすいものがあります。
水や食料といった備えはしていても、使える通信の手段や衛生用品、救急セット、現金や身分証などは意外に忘れられやすいのです。
今回の記事では、避難バッグにありがちな盲点をしっかりと解説します。
さらに家族の構成や健康状態、季節などによって内容を見直すための大切なポイントもお伝えしますので最後までお読みくださいね。

「いつもの備え」じゃ足りない! 見落としがちな盲点アイテム
避難用バッグに入れるべき物というと、多くの人は真っ先に「水・食料・防寒具」といった定番アイテムを思い浮かべます。
もちろんそれらも命を守るうえで欠かせませんから必ず用意しておきましょう。
でも、災害の直後で混乱している時や避難所での生活中は、想定外のトラブルが次々と起こることがあります。
そのときに「入れておけば防げた」「あればもっと安全だった」と後悔するのです。
でも、私たちのいつもの生活ではその重要性を意識しづらいために後回しにしてしまっています。
例えば、情報を確保するための携帯用ラジオやモバイルバッテリーは正しく動く状態でなければいけません。
感染症予防のためのアルコール消毒液も意外と忘れがち。
けがへの応急処置に必要な救急セットもリュックには入れていないことが多いです。
そして今は主流であるオンラインでの決済ができなくなった場合に命綱となる現金や健康保険証・運転免許証の控えなども大事。
これらはどれも緊急時こそ必要になってきますし、使える正しい状態での準備が必要です。
ここからは、そうした見落とされがちだけどとても大切なアイテムを分かりやすくご紹介します。
備えを一段と確かなものにするポイントをしっかりと抑えて下さいね。

災害時に運命を分ける!スマホの充電と情報源
災害時に最も多いトラブルのひとつが、スマートフォンの充電切れ。
スマホは家族の安否の確認をすることや、避難の情報を得るために切らしたくないものです。
地図やライト代わりにも使える命綱ともいえるでしょう。
でも、いざという時にバッテリーが切れてしまえばその全てが機能しなくなります。
実際、モバイルバッテリーは入れている人が多いのですが「充電できていなかった」「使おうとしたら作動しなかった」という声がとても多くあります。
そのため、避難バッグに入れるモバイルバッテリーは、定期的にフル充電の確認をする習慣をつけることが重要なのです。
さらに忘れがちなのが「充電ケーブル」や「変換アダプター」です。
バッテリー本体だけあってもケーブルがなければ使えませんし、避難所で他人に共有をお願いするのはトラブルの元になります。
さらに、乾電池式の場合は電池を一緒に準備することを忘れずに。
劣化してないかの確認も行いましょうね。
ソーラーチャージャーは通信が途絶えてしまうと情報も入りにくく助けを呼ぶことも難しくなって不安と恐怖を感じて過ごさなくてはいけません。
つまり、スマホ充電はただ準備するだけでなく使える状態を常に保てる状態を整えておくをことがとても大事なのです。

避難生活で体調を崩さない!衛生セット
避難所での生活は多くの人が限られた空間に密集するため、衛生状態がとても悪くなりやすいです。
特に断水してしまうと手洗いや洗顔、トイレも使えませんから、感染症が一気に広がるおそれも。
そのため、衛生アイテムは命を守るために欠かせませんが中でも忘れやすいのが、アルコール消毒液や除菌ウェットティッシュです。
もちろん、手洗いできない場面を想定し手指を清潔に保つため用意している人もいらっしゃいます。
でも、かさばる印象から少量しか持たない人が多い傾向にあるのです。
さらにマスクも重要で、飛沫感染の防止だけでなく避難所でのプライバシーの確保やホコリの吸入防止にも役立ちます。
また、歯磨きシートやマウスウォッシュなどの口腔ケア用品も意外と見落とされがちです。
断水するといつもの歯磨きができないので口の中の環境が悪くなり、口臭や歯肉炎などのリスクが高まります。
トイレットペーパーやティッシュペーパーも足りなくなるため自分で用意しておくことも必要。
しかも、トイレットペーパーは湿気でカビやすいので避難バッグに入れる場合は密閉できる袋に入れましょう。
芯を抜いてコンパクトに収納しておくと、かさばりにくいですよ。
少しくらい大丈夫だろうと衛生対策は軽くみていることもあります。
でも、体調を崩せば避難生活がさらに辛くなるため、しっかり備えておきましょう。

あると安心!救急セットと常備薬
避難生活をしている間は慣れない場所で転倒や落下物などによるケガも起きやすいです。
さらに医療機関も人手や物資が足りず、いつものように受診できません。
したがって、自分で応急処置できる備えは欠かせないのです。
救急セットには、絆創膏・消毒液・包帯・ガーゼ・爪切りなど基本的な処置用品は揃えておくようにしましょう。
特に忘れやすいのが、ピンセット(トゲ抜き)や体温計です。
常備薬がないとなっても診察なしでお薬を処方してもらうことはできませんし、ケガをした場合に他人が代わりに取りに行くことも原則としてできません。
さらにお薬手帳のコピーや服薬メモと一緒に入れておくのも忘れないようにしましょう。
また、市販の鎮痛薬・整腸剤・冷却シートなどもできれば持っておくと良いですよ。
ただし、使用期限があるものが多いので、半年に1回は中を点検して期限切れは交換してくださいね。
小さな不調でも避難生活中は思ったよりひどくなることがあるため、このようなセットは必ず揃えておくことが大切です。

災害では必須!現金と身分証明書
意外と多くの人が見落としているのが、現金と運転免許証などの身分証です。
災害のときは停電や通信障害が起きやすく、キャッシュレス決済が使えなくなることが珍しくありません。
実際にこれまで被災された方からはクレジットカードや電子マネーが使えず、コンビニや自動販売機でも現金しか使えず困ったと聞きます。
そのため、千円札や五百円硬貨・百円硬貨などの少額の紙幣・硬貨は用意しておきましょう。
さらに、防水ジッパーバッグなどに入れておくと安心です。
また、通信が繋がりにくい緊急時に使う公衆電話も災害時は無料になりますが、硬貨を入れないと動かない場合があるのも覚えておいてくださいね。
さらに、健康保険証や運転免許証、マイナンバーカードなどの身分証明書は本人確認や医療機関の受診などで必要になります。
とはいえ、原本を常に持ち歩くのは難しいですから、コピーや写真のデータとして準備しておくようにしましょう。
緊急連絡先カードやアレルギーがある方は情報メモ、かかりつけ病院メモなどもセットで入れておくと救助や医療機関での対応がスムーズになりますよ。

誰にとっても同じじゃない! 状況別のカスタマイズ術
避難用バッグの中身は、誰にとっても共通というわけではありません。
年齢や健康状態、同居する家族構成、さらにはペットの有無や季節によって、必要なアイテムは大きく変わります。
ところが多くの人は、家族全員分を一括でまとめようとして「子ども用」「高齢者用」「ペット用」などにそれぞれ対応する物があっても入れ忘れがちです。
実際に被災地では、小さな乳幼児向けの粉ミルクやおむつ、高齢者向けの介護食や補聴器用電池などが不足しました。
特定の人には必要な物が足りない事で大きなストレスや健康被害につながった事例がたくさんあるのです。
また、避難生活では環境の変化によるストレスで体調を崩しやすいので、季節に合わせた暑さや寒さへの対策が欠かせません。
ここからは、家族構成や生活環境ごとに見落とされやすいけれど重要なアイテムをご紹介します。
自分や家族に合わせて中身をカスタマイズすることで、避難バッグの備えはぐっと実用的になりますよ。

子どもさんがいるご家庭の追加アイテム
子どもさんは体力が少なく環境の変化にも敏感ですので、大人と同じ備えでは不十分です。
特に避難生活では、栄養や睡眠が不安定になることで体調を崩しやすくなります。また、安心できる空間がないことに強いストレスを感じる子も。
そのため、子どもさんの専用アイテムを避難バッグに入れておくことは大事です。
まず、粉ミルクや液体ミルクは、哺乳期の赤ちゃんに欠かせないものですが、避難所では支援物資が届くまでに時間がかかることが多いです。
これは忘れてしまうと命に関わりますし、離乳食や幼児用おやつも用意しておかなければなりません。
紙おむつ・おしりふき・ビニール袋(使用済みおむつの処理用)も忘れがちですが、清潔を保つために準備しておきましょうね。
さらに、避難所での寝かしつけに役立つ抱っこひも、ストレス軽減のためのお気に入りのぬいぐるみや絵本も大切です。
心の安定は体調にも直結し、子どもさんの年齢や段階に合った備えをしてこそ、安心して避難生活を乗り越えられます。

高齢の方がいるご家庭の追加アイテム
高齢の方は体力や免疫力が低下しているため、避難生活では健康リスクが高くなります。
さらに視力や聴力、足腰の衰えなど、日常生活に補助が必要な場合も多いので備えも多くなります。
特に忘れがちなのが、持病薬や常備薬。
前の章で書いたようにお薬は避難所で手に入りにくいです。
しかも普段と違う環境では病状が悪化することもあるので、お薬手帳のコピーや服薬メモと一緒に最低3〜7日分を用意するようにして下さい。
さらに、咀嚼力や消化機能が下がっている場合、介護食や栄養ゼリーなどやわらかく栄養価の高い食べ物も忘れないでください。
避難所では体調悪化が重くなる傾向があるので、最低限これらのアイテムを忘れずに入れておくことが重要です。
他にとても大切なのが座れるイス。
避難所では基本的に床に座る生活が中心で、若い人たちでも長時間の立ち座りや硬い床は体の痛みの原因になります。
特に高齢の方にとっては床からの立ち上がりが大きな負担になるため、イスがあるだけで疲労感や体調への影響が大きく軽減されます。
軽量でコンパクトにたためるタイプをバッグに入れておくようにしましょう。
また、このようにトイレにもイスにもなるアイテムもおすすめです。
災害時だけでなく、アウトドアや介護などでも使える「丸洗いできる非常用トイレ」

もしトイレが使えない場所でもこれがあれば凝固剤をセットして座って用が足せるだけでなく、折りたたむと非常にコンパクトになり、イスとしても使えます。

トイレ問題と座る場所の問題を同時に解決できるので、とても頼りがいがあります。
また、こちらの座れる防災バッグを使うことでも解決できます。

大切なペットと離れても安心できる準備
大切な家族であるペットですが、多くの避難所では一緒に過ごす事はできませんので、屋外や車内、別室での管理を求められます。
環境省や日本獣医師会も「ペットと一緒に避難する場合は、人とは別に専用の避難用品を用意すること」を推奨しています。
まず必要なのはキャリーケースや折りたたみケージ。
車内や屋外でも安全な居場所が確保でき、逃げてしまうことやけがを防げます。
次に、ペットフードと飲料水(普段食べ慣れたものを3〜5日分)、ペットシーツ・うんち袋・ウェットティッシュなどの衛生用品。
ペットは災害時に予想外の行動をする事も多く、混乱で逃げ出すことともあるため身元を示す物は命綱になるからです。
さらに、毛布やお気に入りのおもちゃ、飼い主の匂いがついた布などもあると、ストレスを大きく減らせます。
避難所に入れないことを前提に数日過ごせる準備を整えることがペットの命と安心を守る第一歩です。

季節の変わり目に必ず見直すべきポイント
災害は季節を選ばず起こりますから季節に不向きな装備だと、体調を崩してしまう危険があります。
寒い季節には、長そでの衣類にカイロや手袋などを準備しましょう。
特におすすめしたいのがアルミブランケット。

小さく軽いのに体温を逃さず保温できるため、日本赤十字社も防災備蓄品として推奨しています。
夏は熱中症のリスクが高いため、冷感タオルや日よけ帽子、冷却用のコールドパックなど暑さ対策グッズが役立ちます。

また、雨の対策にレインポンチョも忘れないようにしましょう。
今の季節で着られるものか?雨や寒さ暑さに対応できるか?を基準にシーズンごとに中身を見なおすことを忘れないようにしてくださいね。

まとめ
避難用バッグは一度作れば安心…と思われがちですが、そうではありません。
食品や常備薬には消費期限がありますし、子どもの成長や家族構成の変化によって必要な物も変わります。
また、季節が変われば服装や気候への備えも見直しておかないといけません。
避難バッグは「完成」するものではなく「更新」するものであり、それが本当に役立つ備えになります。
私は半年に一度はバッグの中身を見て期限切れを入れ替えたり、バッテリーをチェックしたり、季節に合わせて調整したりしています。
これを習慣化しておくといつでも最新の状態を保つことができますよ。
災害はいつ起きるか予測できませんが、今、備えておくことで大切な人たちとの暮らしを守る力になります。
避難用バッグは詰めたら終わり、安心ではなく、家族と自分を守るために定期的に見直していきましょう。
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